ギター選びの3要素

皆さんはアコースティック・ギターを選ぶとき,どんな基準で探しますか?

初心者の方が初めてギターを買う時,上級者がセカンドギターを買う時,大枚をはたいて一生モノのギターを買おうとする時…など,そのケースによって違うとは思います。

たくさんのギターを弾いてきた私は,ギター選びの3要素があると思っていて,この3要素のどれかが欠けると,結局あまり手に取らないギターになってしまうと感じています。

その3要素をご紹介しますね。

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1. ルックス

人を好きになるときもそうかもしれませんが,まずは見た目の印象で惹かれるものですよね。

お店で展示されているギターを見て,思わず一目惚れして買ってしまったという方も多いでしょう。

オークションなどでギターを落札して,届いたギターケースを開けて実物を見て,「やった!」と思ったり,「やられた…」と思ったり。これもルックスからくるものですね。

好みのルックスというのはまあ総合的な印象なわけですが,実は色々な要素が関わっているわけで,数多くギターを見てくると,自分の好みを分析することができるようになって,好みの傾向が分かってくるものです。

本当に気に入ったギターは,ケースを開くたびに「カッコイイな~!」と惚れ惚れしたりします。

こんな感じが長続きするギターとはきっと長い付き合いになりますね!

ルックスと関わるいくつかの要素に触れておきましょう。

◆ ボディータイプ

アコースティックギターにはボディーの大きさや形状で代表的なものだけでもいくつものタイプがあります。

Martinギターの代表的なボディータイプ

例えば,世界でもっとも有名なアコースティックギターメーカーと言っても過言ではない,Martin製のギターには主なものだけで上のようなボディータイプがあります。(左から,シングルオー / O,ダブルオー / OO,トリプルオー / OOO,ドレッドノート / D)

ボディータイプはおもに,後述するサウンド(音質)や弾きやすさに大きな影響がありますが,見た目の印象も当然変わってきますね。

ちなみに私は,若い頃は「ドレッドノートじゃなければギターらしくない」というような印象がありましたが,今は小ぶりなギターの方が好きになりました。

◆ 塗 装

塗装によるルックスの好みと言えば,まずは「色」ですね。

「ナチュラル」と「サンバースト」が定番ですが,最近は様々な色のギターが販売されています。

色以外にも,見た目の印象に影響があるのは「グロスフィニッシュ」と「マットフィニッシュ」,つまり「ツヤの有無」ですね。

個人的にはピカピカのギターより,経年で塗装が退いてきたようなルックスが好みです。

ちなみに塗装は音質にも大きな影響を与えますね。

2.サウンド(音質)

楽器ですから,ある意味で一番重視すべきは音質ですよね。

音質の良し悪しについては,ほぼ全員が「これはイイ!」と思うものと,好みの問題になるものとがあると言えます。

いわば絶対的な音の良さ(異論もあるかもしれませんが)には,はっきり言って「お値段」が関係するといって良いでしょう。

ギターにとっての「良い材料」をチョイスして,「高い技術を持つ職人」が製作したギターは,おのずと高価になりますが,低価格帯のギターとは当然一線を画すサウンドです。

まあ,上手なギタリストが手に取って弾くと,ショボい安物ギターでもいい音に聞こえたりもしますが,シンプルに弦を弾いて出る生音はやはり決定的に違いますね。

さらに高価なのは「ヴィンテージ」と表現されるギターですが,元々良材を使った腕のいい職人によるハンドメイドのギターが数十年を経て,木材の経年変化による素晴らしいサウンドを奏でるようになります。

特に「ゴールデン・エラ」と呼ばれる1930年代のMartinなどは,本当に素晴らしい音がします。

下の動画は,1935年製の Martin OOO-28 です。

1935年製 Martin OOO-28

ちょっと動画では音の素晴らしさが伝わりにくいですね。

ちなみに,見たところかなりコンディションもいい個体なので,お値段もかなりすごいでしょうね!

あとは好みの問題になってきますし,個体によっても鳴りが違ってくるので,実際に弾いてみないと判断できませんが,サウンドに影響を及ぼす要素についていくつか取り上げてみますね。

◆ 材 質(木材の種類,単板or合板…)

トップとサイド・バックに使用する木材の組み合わせによって,音の傾向がある程度決まってきます。

代表的なトップ材はスプルース(松系)とシダー(杉系)ですが,その中にも様々な種類があります。

例えば,ヴィンテージMartinには普通に使われていた「アディロンダック・スプルース」は,パワフルでクリアなサウンドでギターに最も適しているとも言われますが,今ではすっかり希少材になってしまいました。

サイド・バック材の種類が音色を決めるといっても過言ではありませんが,その代表選手は,ローズウッドとマホガニーといってよいでしょう。

ローズウッドの傾向としては,低音は深みがあり,高音は倍音が多めで煌びやか,全体としてボリュームがあって,まあ高級感のある音というような印象だと思います。

マホガニーは,中高域が明るく軽やかなサウンドで,個人的には良材のマホを使ったギターは大好きです。

ローズとマホにもいろいろな種類があるのですが,中でも「ブラジリアン・ローズウッド(ハカランダ)」と「ホンジュラス・マホガニー」は希少で人気があります。

サイド・バック材の組み合わせは本当に多岐にわたるので,いろいろと弾いてみると好みがわかってくると思います。

あと,「単板か合板か」ということもあります。

合板というのは,いわゆるベニヤ板みたいに薄切りの木材を重ね合わせた材のことで,単板は一枚ものです。

一般には,高価なギターになってくるとすべて単板が使われるようになります。

一概には言えませんが,例えば YAMAHAの「赤ラベル」のように合板ギターにもバカ鳴りするようなものがあるものの,音の深みにはどうしても欠けるように感じますし。

初心者の方がギターを選ぶ場合でも,やはり少なくともトップは単板のギターを選んだ方がいいのかなと思います。

◆ 塗 装

塗装はルックスだけでなく音質にも大きな影響があり,特に塗装の厚さが鳴りや音抜けと関係してくるようです。

一言でいうと,「薄ければ薄いほど良い」のではないかと考えます。

結局,塗装が厚いと振動が妨げられるので鳴りにくくなるわけで,塗膜の薄いラッカー塗装,マットフィニッシュの方が鳴りが良い傾向になると思います。

塗装は経年によっていわゆる「退いた」状態に変化してきてボディと一体化してきますが,そうすると音抜けの良いヴィンテージサウンドになってくるようです。

3.弾きやすさ

最初のうちは気づかないのですが,実は,この「弾きやすさ」がアコギ選びで一番大事かもしれないと思うようになりました。

弾きやすいギターというだけで,腕が良くなったのかと勘違いするほど気分良く弾けたりするのです!

この点は,特に初心者の方が挫折しないために大切ですし,長年の相棒にするにも欠かせない点だと思います。

弾きやすいかどうかを分ける一番のポイントは,なんといっても適切な弦高でしょう。

この弦高は購入後のナットとサドルのセットアップである程度調整が効きますし,わたしはネットオークションなどで購入したギターを自分で調整するのが趣味になってしまいましたが,楽器店で新品を買うのならお店で調整してもらうのが良いと思います。

でも,弾きやすくするために購入後の調整が効かない点もありますので,注意できることを書いてみます。

◆ ネックアングル

ネックの仕込み角のことで,これが浅いとナット溝やサドルを限界まで削ってみても,適正な弦高まで下がりません。

特に,古いギターをオークションなどで購入する時はチェックが必要です。

いわゆる「ジャパン・ヴィンテージ」は元々仕込み角が浅いものが多く,YAMAHAなどはネックが「元起き」(付け根部分から指板側に起きているような状態)していることも多いので,購入前にネックコンディションをよくチェックしておかないと後で泣くことになります。。。

◆ ボディサイズ

自分の体のサイズや演奏するシチュエーションにあったボディタイプのギターを選ぶ必要があります。

体の小さい人や女性にとっては,ドレッドノートは大きすぎて弾きにくいと感じる場合が少なくないと思います。

男性でも家で胡坐をかいて弾くようなシーンが多いとか,悲しいかな五十肩になってしまったというような場合も,ヒップが大きめのギターは弾くのが辛くなってしまいます。

◆ スケール,ナット幅,E to Eスペーシング

言うまでもなく,人によって,手の大きさ,指の長さや太さ,柔軟性などが違います。

手が小さくて指が短いとフレットの間隔が狭い方が届きやすいですし,指が太いのに弦間隔が狭いと隣の弦に触れてしまって音がビビりやすいですよね。

私は,指が太くて,短く,手に柔軟性がないという三重苦で,ギタリストの動画などで,手が大きくて細くて長い指の人を見るとホントうらやましいです!

そういうわけで今の私のギターは,スケール(=弦長):628mm,ナット幅:44.5mmです。

E to E スペーシングというのは1弦から6弦までのナット上とサドル上での間隔のことで,例えば同じナット幅でもE to E スペーシングはメーカーによって結構違ったりします。

私の場合は結構広めの方が弾きやすく感じます。

これらの寸法は1mm違いで大違いですので,ぜひ気にしてみて下さい。

◆ ネックの形状(断面)

これも手の大きさなどが関係しますが,ネックの形状は弦の押さえやすさなどに大きく影響します。

代表的なのは「Uシェイプ(かまぼこ型)」と「ソフトVシェイプ」でしょうか。

同じかまぼこ型でも,厚みによって驚くほど感じが変わりますので,いろいろと触ってみることをお勧めします。

私は個人的には「ソフトV」派です。

細かいところに注意して弾いてみる

自分の経験から気になる点を書いてみましたが,ちょっと細かいところに注意してみるだけで,弾きやすくて良いギターと出会える可能性は高くなると思います。

後はやはり,たくさんのギターを弾いてみることですね。

ギターにハマると,ついつい本数が増えてしまって家族からひんしゅくを買ったりしますが,自分の好みがわかってくると1,2本で十分という気になってきました。

今は(2020年12月現在)1本のギターで満足していますし,買い替えようという気は全く起きていません。

前述の3要素が揃っていないと,気に入って購入してもしばらくするとあまり手に取らなくなってしまうんです。

ちなみに,これまで手に入れたギターについては My Guitars のページをご覧ください。

コレクターでなければ,弾かないギターで場所をとってしまうのは邪魔ですからね。

あなたも素晴らしい相棒と出会えたらいいですね!